竹川 薫
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図1) |
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【 研究概要 】
【概要】
今後、需要が高まると予想されている3−ヒドロキシプロピオン酸を分裂酵母を用いて大量に生産する技術を確立した。
<意義・必要性>
・有用な有機酸は現在、化学的に合成されているものが多いが、石油資源の枯渇によって将来的には微生物による生産系も重要であると考えられている。
・3−ヒドロキシプロピオン酸(3-HP)は吸水性樹脂として利用されているアクリル酸や1,3-プロパンジオールなどの前駆体物質であり、微生物による高生産に関する研究が大腸菌を中心に行われている。
・大腸菌は酸性条件では生育が阻害され、3-HPの生産にはアルカリ添加により、中和の操作が必要である。一方、pH2の条件での生育可能な分裂酵母は、1Mの3−HPでも生育阻害が起こらないため生産株として極めて有用である。
<手法>
我々は分裂酵母の代謝経路を改変することにより、3-HPを高生産可能な株を作ることに成功した。具体的には、分裂酵母にクロロフレクサス細菌のマロニルCoAレダクターゼ遺伝子を導入、分裂酵母自身のアセチルCoAカルボキシラーゼ (Cut6)を高発現させ、プロテーゼ多重破壊株を用いた。さらに培地に酢酸を添加することや細胞質のアセチルCoA量を増加させることでさらに3-HPの高生産が可能であることも明らかにしている。
【シーズの優位性】
酵母による3−HP生産株の育種に関する報告はほとんどない。
【シーズの応用可能性】
生命科学研究全般、分裂酵母という全ゲノムが解析されている株による研究は合成生物学研究などへの適用も可能である。今後はさらに培養条件等の検討を行うことで、実用化可能な分裂酵母株の創出を試みている。
→基礎生命科学:酵母の細胞質内におけるアセチルCoAの生産方法の解析、酵母における異種タンパク質生産系の構築、など。
→バイオリファイナリー:本手法の応用により、3−HP以外の有用有機酸等の木質バイオマスから生産が可能となる。
→合成生物学:分裂酵母細胞内には存在しない細菌由来の代謝経路を導入したことで、分裂酵母細胞内の代謝経路がどのように変化しているのか、メタボローム解析を含めて解析が可能となる。
【 ファイルダウンロード 】
添付ファイル1
【 関連キーワード 】
有機酸製造技術
| 3−ヒドロキシプロピオン酸
| バイオリファイナリー
【 関連URL 】
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/hakko/
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